自分の幸せを最優先に生きる―「変な大人」① 配信者・みずきさん

 記念すべき第1回の「変な大人」は、配信者のみずきさん。みずきさんは、どのような「大変さ」と向き合いながら、良い意味で「変な大人」になったのでしょうか?

#しんどい人へ #毒親 #ライフハック

「母の人生に自分は邪魔だ。」子どもの頃から抱える思い

――みずきさんが子どもの時抱えていた「大変さ」は何でしょうか?

「母の人生に自分は邪魔だ。」「自分は早くいなくならなくてはいけない。」と、子どもの時からずっと思っていました。小学生の時はとにかく母が怖かったですね。テストの点が悪かったときは、必ずその分良いニュースを用意して、母の機嫌を損ねないようにしていました。点の悪いテストだと、母がビリビリに破ることもあったんですよ。その後、自分で貼り合わせろ、勉強しろと言われて。

――それは理不尽ですね…

 中学1年生の頃、学校の宿題が終わらなくてつらくて、母に泣きついたことがあったんです。その時に冷たくあしらわれて。自分には頼ることができる存在がいないんだ、と絶望しました。

頭の中の友人に不安を打ち明けていた

――当時みずきさんは、そうした母の「大変さ」とどのように向き合ってきたのですか?

 僕の場合は、頭の中にもう一人友人がいたんですよ。専門的な言葉を使うと、イマジナリーフレンドみたいな。その友人にひたすら不安を打ち明けていました。その友人は、僕よりも頭が良い設定だったので、友人と頭の中で会話することで、少し安心できることがありましたね。もちろん、外部の友人関係でも、趣味でも何でもいいので、とにかく自分の心の支えとなる世界を作るということが大事だと思います。

「公務員にならないなら出て行け。」母との決裂が、人間関係の好転につながる

――母に家から追い出されたと聞きましたが…

 はい。大学卒業頃、「公務員にならないなら出て行け。」と言われて、鍵も替えられて。そのときは、最初親戚の家に寝泊まりさせてもらいました。ただ、夏にエアコンがなくて耐えられなくて。その親戚の家からも出て、昼は図書館で、夜は大学の空き教室で寝泊まりしていましたね。

――過酷ですね…

結局、母が「大学院に行くなら戻って来い。」と言って来たので、住むところを手に入れるために、やむなく勉強して大学院に入りました。けれど、大学院にもなじめなかったです。当時からファッションに興味があったので、色彩検定を取ったら、その合格通知を見た母が「公務員にならないのか。」とキレてきて。そこで、もう付き合ってられないと思って、ようやく一人暮らしをする決心がつきました。もっと早く決心すべきだったんですけどね。

――一人暮らしを始めて、変化はありましたか?

 人間関係が良くなりました。それまでの自分は、寂しいからとにかく人と一緒にいようとするところがあって。自分から離れて行ったらめっちゃ怒るみたいに、相手の気持ちをあまり考えられていなかったんですね。でも、一人暮らしを始めたことで、母のことをあまり考えなくてよくなったせいか、相手のことをちゃんと考えるようになって。もちろん最初はうまくいかなかったけど。本当に自分のことを考えてくれる人は離れていかないと気が付いてからは、精神的に安定して、人との距離感を気持ちよく取れるようになりましたね。

※どうすれば親から逃げて一人暮らしできる?→https://daisan-kazoku.net/nigeruno

女性服―やりたいことがどうすればできるか、あきらめずに考える

――みずきさんは、大学在学中から女性服を着て外出し始めたということですが、女性服を着て外出することに不安はなかったですか?

 僕は、したいことを我慢しない性格なので。人からどう思われるかという不安より、悪く思われることにどう対処するか、どうすればしたいことができるか、それを考えていました。小さい頃から友人にかわいいと言われていたし、頑張ればできるんじゃないかという自信はあったので。

――その自信が揺らいだことはなかったんですか?

 高校生の時に、友人からかわいくなくなったと言われたときは、自信もなくなったし、成長していく自分の身体が恨めしかったです。でも、大学に入って、色々な人を見る機会を経て、周りの評価が、まだまだ自分のがんばり次第で変わると気付いたんです。昔からずっと「かわいくなりたい!」と思っていたので、それをどうしたら実現できるか考えて、とりあえずやってみる。周りから何か言われたら、その人たちにかわいいと言わせるためにどうすればいいか考えて、またやってみる。そういう努力の繰り返しで、周りも変わっていったところがあります。それでも悪く言う人のことは無視する。やりたいことをあきらめて我慢するのではなくて、やりたいことをどうすればできるか。努力する部分はそこだと思いますね。

人の強い感情が表れるのが好き

――ところで、みずきさんは、今演劇活動もされていますよね。

 はい。小学校6年の時に演劇クラブに入っていて、演技がうまいと評判だったんですよ。中高は男子校で演劇クラブがなくて、学園祭で演劇するくらいだったんですけど、大学で演劇サークルに入って。テアトルアカデミーにも入学して、本格的に勉強しました。

――演劇の中では、どんな部分が好きですか?

 強い感情を表現できるところですね。演劇の中では、相手の感情がありありと分かるので。感情をはっきり言葉や動きで表現できるってかっこいいと思うんですよ。リアルでは、相手の感情をあれこれ推し量るのも疲れるし。大学では、演劇サークルで、自分にしかできない演技が求められていたことも、心の支えになっていました。

心の支えを見付けるためには

――心の支えとなることを見付けるためには、どうすればいいですか?

 自分のありのままを認めてくれる人を見付けることが大事だと思います。そのためには、会ったことがない人と積極的に会ったり、色々なコミュニティに入ったりして、試行回数を稼ぐことが必要かな。僕の場合は、大学2年の時にサークルにいくつか入って、そういう途中から入る人って少なかったんだけど、そうして勇気を出してサークルに入ったことが、演劇につながったから。なかなか難しいことだけど。

――確かに、難しいですね。どうすれば、会ったことがない人と会うことに積極的になれますか?

 参考になるかは分からないけれど、会ったことがない人と会うことや、色々なコミュニティに入るってことは、自分が色々な評価を受けることだから。その評価の中には、悪いものも必ずあるし、良いものも必ずある。だから、悪い評価をあまり気にせず、良い評価をしてくれる人のことを中心に考えることが必要だと思う。悪い評価を減らすことよりも、良い評価を増やすことの方が何倍も大切だから。万人受けする人間より、自分を高評価してくれる人をもっと喜ばせられる人間の方が、魅力的だと思っているし。

自分の幸せを最優先に

――最後に、この記事を読んでいる人にメッセージを。

 自分の幸せを最優先にしてください。他の人の事情や評価を気にして、自分のしたいことをあきらめている人がいると思うけど、自分の人生は自分のもの。だから、自己中心的になっていい。自分を評価してくれる人のことだけ考えて、それ以外の人からは逃げていい。やりたいことをする自分と、その自分の存在を喜んでくれる人たちがいれば、きっと幸せに生きていけると思います。

(構成・文責 伊本タト)

みずきさん(下島瑞樹)

1995年生まれ。中学時に父母が離婚し、母からは精神的虐待や教育虐待を受けながら育った。現在はITエンジニア業の傍ら、YouTubeやTikTokで配信活動をしており、「大変な」状況にいる人々を元気づけている。また、演劇集団『Cakeのひときれ』の一員として演劇活動にも携わっており、インプロ(即興劇)のワークショップなどを行っている。

出演番組:『ザ・ノンフィクション』、『さんまの東大方程式』(フジテレビ系)、『街録チャンネル』(YouTube)ほか

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